「住宅ローンを使っての不動産投資」がおすすめできないリアルな事情

不動産投資では「住宅ローン」という選択肢もある?

不動産投資で物件をローンで購入するには、「事業用ローン」を組むのが普通です。事業用ローンは「不動産投資ローン」「アパートローン」「プロパーローン」と呼ばれたりもします。事業用ローンの金利は、おおよそ2~3%。

ところが、それより大幅に安い金利で物件を買う方法もあります。それは「住宅ローン」を利用すること。住宅ローンの場合、金利は0.5%くらいが一般的です。2~3%と0.5%ですから、その差はかなり大きいですよね。
※住宅ローンと事業用ローンの金利に関しては、"不動産投資のローンの金利、実は業者によって大違い。そのカラクリを教えます"を参照ください

また住宅ローンは事業用ローンよりローン審査が通りやすいうえ、確定申告の際に「住宅ローン控除」に計上でき、税制優遇が受けられます。

そんなさまざまなメリットのある住宅ローンだけに、実際に住宅ローンを使って不動産投資を行う人も一部でいます。中には、物件を販売する不動産投資業者が率先して住宅ローンを勧めるケースも一部であるようです。

これだけ聞くと、住宅ローンを使っての不動産投資はいいことづくめに思えます。もはや住宅ローンを使わない手はないのでは??

いえ、残念ながら、そうでは決してありません。いいことづくめだったら、誰もが住宅ローンを使っているはずですよね。でも実際は、多くの人が事業用ローンを使って不動産投資をしています。なぜ住宅ローンを使わないのか? そこには、さまざまな「問題」があるからです。

住宅ローンを使っての不動産投資の問題点

問題点としてまず挙げられるのが、ルールに反することです。住宅ローンはそもそも自分や家族が居住する住宅のためのローンなので、賃貸経営を目的とする場合はローンを組めません。そこでどうするかというと、いったん住宅用という体裁でローンを組み、住民票などもそこに移した後、賃貸経営にまわすのです。自分は他の家に住みます。もし初めから賃貸に転用することが目的であるのなら、ありていにいえば、金融機関に嘘をついてお金を借りることにほかなりません。

その時点でルールやモラルに反するわけですが、加えて確定申告の際に、自分で住んでもいないのに税制優遇まで受けることになります。これは明らかにルール違反といえるのではないでしょうか。

そして何より大きな問題なのが、ローン規約違反で契約解除となり、ローンの一括返済を求められる可能性があることです。

たいていのローン規約では、「違反が発覚した際は、ローンを一括返済していただくことがあります」という旨が書かれています。だからもし賃貸への転用が発覚した場合、直ちにローンを全額返済しなくてはならなくなるかもしれないのです。もし手持ち資金がなければ、物件を売ったり、新たにどこかからお金を借りたりしなくてはならないでしょう。

それと住宅ローンには、もう一つデメリットがあります。それは、ワンルームマンション投資に向かないこと。住宅ローンを組むには、マンションであれば延べ床面積が30㎡以上ある必要があります。30㎡以上となると、必然的にワンルームマンションではほぼなくなります。そしてワンルームよりも大きい間取りの物件となると、賃貸需要が大きく下がり、一括借上契約を受けるのが難しくなるのです。

だからワンルームマンション投資の醍醐味といる「一括借上をしてもらいながら手堅く資産を積み上げていく」というスタイルには、そもそも向いていないともいえます。ワンルームマンションであっても、最初に数百万円の頭金を支払うことで住宅ローンを組めるケースもありますが、当然ながら資金的なハードルは上がることになります。ローン審査も容易ではないかもしれません。

なぜ住宅ローンを使って投資できている人がいるのか

ここで、一つ大きな疑問がわき起こります。そもそも、なぜ住宅ローンを使って不動産投資できている人が存在するのか? 金融機関はなぜもっと徹底的に取り締まらないのでしょう??

その理由の大きな一つが、転勤などで不意に生活環境が大きく変わる場合があるためです。住宅ローンを使って自宅を買ったものの、その後転勤が決まったり、親の介護をする必要が出たりなどで、自宅を離れなくてはいけなくなってしまった。だから住宅ローンで買った家を人に貸したい。こういった意図せず発生した特殊な事情による賃貸転用に関しては、銀行も禁止することができないのです。

そもそも銀行としては、つきつめればローンがきちんと返済されればOKなわけです。だから、賃貸に転用していないかどうかをそこまで厳しくチェックすることはあまりなく、“賃貸への転用は禁止”というルールは実質的に形骸化しているともいえます。

ただ、こうした規約の“抜け穴”を付いての悪質な賃貸転用が、近年はコンプライアンス的に問題視されています。そして、実際にそうなるケースは多くないにせよ、賃貸転用が発覚したら規約上、契約無効となる可能性があるのも事実です。資産を手堅く築こうとして不動産投資をするのに、そうしたリスクをわざわざ作って投資するというのは、どうなのでしょうか。心理的な不安や後ろめたさをずっと抱えることにもなります。

結論:住宅ローンでの投資はおすすめできない

そしてこうした事情を全く伝えずに、物件を買ってほしいがために住宅ローンを勧める不動産業者は、いかがなものでしょう。信用性や経営安全性に乏しいと言わざるを得ないのではないでしょうか。

もちろん、こうした住宅ローンの問題点を全て鑑みたうえで、あえて住宅ローンで不動産投資をするという人も中にはいるかもしれません。でもNAVIVA編集部としてはやはり前述の理由から、決しておすすめできません。

実は、住宅ローンを使っての不動産投資を、ルールに則ったうえでやれる“裏ワザ”もあるにはあります。それが「賃貸併用住宅」にすること。賃貸併用住宅とは、一つの建物の中に自宅用の空間と賃貸用の空間が共存した家のことです。

ルール上は、住居用の面積が50%を超えていれば、残りが賃貸用であっても住宅ローンを組めることになっています。だから金融機関の審査が通りさえすれば、ルールに則ったうえで、住宅ローンを使って賃貸経営できるというわけです。

ただしローン審査は通常の住宅ローンよりもかなり厳しくなることが多く、また併用できるほどの広さであるだけに、物件価格も自然と高くなります。さらには入居者との住み分けや日々のやりとりなど、面倒な部分も増えます。初めて不動産投資をする人には、なかなかハードルが高いのではないでしょうか。

やはり世の中には、「ただただおいしい話」というものはないようです。確かに規約的にはグレーであって抜け道があるのかもしれませんが、それ相応の経済的リスクや心理的負担を被ることにもなる。ローンを選ぶ際は、ぜひそのことを念頭に置いたうえで、ご自分に合ったものを選んでいただければ幸いです。

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NAVIVA運営部

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