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事故物件紹介サイト「成仏不動産」が見た事故物件のリアル /成仏不動産インタビュー①

作成者: NAVIVA運営部|2021年4月27日

もし自分の物件で、人が死んでしまったら……。不動産投資をする人にとって「事故物件」は無視できない問題です。実際に“事故”が起こった場合、物件はどうなるのでしょう?

事故物件を専門に紹介するウェブサイト『成仏不動産』を運営する株式会社MARKS 代表取締役社長・花原浩二氏に、事故物件の現場の“リアル”を聞きました。

【インタビュイー紹介】
株式会社MARKS
代表取締役社長 花原 浩二 様

ニオイをとっても数カ月後に“復活”する場合が

──これまでで特に記憶に残っている事故物件はどのようなものですか?

あるオーナーが一戸建てを貸し出したところ、入居した家族の母親と娘が喧嘩をし、母親が庭で灯油をかぶって焼身自殺してしまいました。それにより物件の価値が大きく下がってしまい、貸し出すのにしても家賃を相当下げないとだめだろうし、売るのにしてもかなり安値になりそうで、ローンの残債をとてもまかないきれない……。もうどうにもならないということで、うちに相談がきたのです。

──どう対応されたのですか!?

現在、そこをグループホームに転用して賃貸経営を行う方向性と、物件に何らかの付加価値を付けて安すぎない値段で売る方向性の、2方向で動いています。
また、記憶に残ると言いますか、「ニオイ」の面で大変だった物件もあります。

──ニオイ……ですか?

はい。事故物件では、時に「ニオイ戻り」というものが起きます。

少し前に、遺体の発見まで2ヶ月以上かかり、床や壁に跡が残るレベルまで損傷してしまった物件の相談がありました。ニオイに関しては、お客様の方で他の業者様に清掃依頼をしたところ、激臭はなくなり、なんとなくニオイはするけど部屋には入れるというレベルになったとのことで、それが冬のことでした。

ところが、それから3ヶ月ほど経ち春になった頃に、ものすごいニオイがまた発生してしまったのです。ニオイの元がきちんと除去しきれておらず、暖かくなってニオイが戻ってしまったのですね。その段階で、これはどうにもならないと弊社に相談がきました。

──そのニオイは結局、どうなりましたか?

タンパク質を視覚化する特殊な溶剤を使い、コンクリートに染み込んだニオイの元を明らかにし、削り取ったり部分撤去したりするなどしたところ、ニオイはすっかりなくなりました。

発見まで長期間かかる孤独死が増えている

──いきなり衝撃的なお話が出ましたが、そもそも「成仏不動産」を立ち上げた経緯を簡単に教えてください。

私は、不動産事業を手掛けるMARKSという会社を運営しています。ある日弊社に、たまたま事故物件の買取依頼が舞い込みました。その際、買い取って再販売するにはどのような経費がかかるのか、そしてどれほどの値段で売れるのかが全くわからず、調べても出てこないため困ってしまいました。まずは、それが1つのきっかけとなっています。

あわせて事故物件というものは、事故物件情報サイト『大島てる』さんなどの影響もあって嫌悪する人もいる一方、逆にあまり気にならない人もいるだろうと思いました。そこで事故物件の取引に関する仕組みをもっとオープンにし、事故物件を売りたい人と事故物件でもOKという人をマッチングするサイトを作ろうと、2019年4月に『成仏不動産』を立ち上げたのです。

その後、専門業者さまと提携して特殊清掃も請け負うようになり、さらには事故物件の自社買取も始めました。おそらく事故物件に特化した物件情報を掲載するサイト、そして買取から特殊清掃、販売までをワンストップで行う業者は、弊社が初めてではないでしょうか。

──ビジネスモデルはどのようなものですか?

大まかにいうと、自社で買い取って特殊清掃やリフォームをして販売する際の利益や、事故物件を投資家に紹介する際の手数料を収益とするビジネスモデルです。成仏不動産では、自社で買い取っていない他社さまの事故物件も掲載していますが、そちらはサイトの物件数を増やす目的もあるので、手数料は受け取らず無料で掲載しています。当事業の一番の根底にあるのは、事故物件で困っているオーナーを助けたいという思いです。

──昨今の事故物件の状況はどのようになっていますか?

物件での死亡事故は、年間で5万件ほど発生しています。そのうちのほとんどを孤独死と自殺が占め、孤独死がおよそ3万件、自殺がおよそ2万件です。日本全体で約6000万世帯あるので、1年間で事故が起こる物件は全体の約0.08%に過ぎませんが、毎年5万件積み上がっていくわけでもあります。事故物件の件数は、東京が圧倒的に多いのです。

間取りでいうと事故物件は、30平米以下の1Rタイプの部屋で起こることが多い傾向にあります。ファミリータイプの物件の場合、たいてい同居者がいるため、孤独死にはなりにくいのでしょうね。ただ自殺や他殺に関しては、1Rが突出して多いわけではなく、他の間取りでも同じ程度起きています。

──最近の事故物件の傾向を教えてください。

このところ、発見まで2ヶ月〜半年ほどかかる孤独死が増えています。以前であれば知人と顔を合わせる機会がそれなりにあったので、顔を見せなくなったら誰かが気づいたけれど、コロナ禍によって顔を合わせる機会が減り、孤立化する人が増えているようです。したがって孤独死は、より社会問題化しつつあるとも言えます。

(写真:事故物件の清掃前・清掃中の様子)

ちなみに孤独死の割合は、女性より男性の方が2~3倍も多い傾向にあります。男性の方が、より孤立化しやすいのかもしれませんね。

──特殊清掃の料金は、どう決まりますか?

発見されるまでの日数が長いほど、そして死亡者の体重が重いほど汚れやニオイが残りやすくなり、料金は高くなります。なぜ体重かというと、体重がある人ほど、体液も多くなるからです。特に身体の脂肪分が、汚れやニオイの元になりやすいようです。

*特殊清掃の料金システム | 特殊清掃なら成仏不動産(外部サイトに遷移します)

事故物件は道路からひと目でわかる場合も

──成仏不動産の社員さんも、特殊清掃には立ち会いますか?

やはり現場を知らないと、対策や思いも出てこないので、少なくとも一回は現場に立ち会ってもらっています。たとえば床にこびりついた体液を、ヘラのような道具でこそげ落とすといった実務作業も行ってもらいます。

──遺体のニオイとは、どんなものでしょう……?

独特でうまく表現できません。日常ではまず嗅ぐことのないニオイです。我々も決して慣れることはなく、ニオイに泣きそうになりながら現場に入っています。

──特殊清掃の現場には、どんな装備で入るのですか?

ブルーの防護服をきて、防毒マスクのようなゴツいマスクを着けます。ゴム手袋もします。清掃中は、ニオイが外に漏れないよう部屋を締め切り、エアコンはつけません。エアコンをつけると、エアコン自体にニオイが染み付くだけではなく、外にニオイが漏れ出てしまうことがあるので消したままにしています。ですので、真夏は地獄のように熱い。あらためて職人さんはすごいなと思います。

また現場から出た時に、油断してマスクを外すと、防護服についたニオイにむせかえります。なのでマスクは最後まで着けておく必要があるのです。とはいえ防護服を脱ぐ時に、結局は自分の服にもニオイが移ってしまいます。

ちなみに事故物件は、外からひと目でわかる場合があります。

──なぜわかるのでしょう?

ニオイが少し漏れるのか、窓にびっしり虫がたかっているからです。そういう部屋は、道路上から「あ、あそこだ」と、すぐわかります。したがって特殊清掃をする前は、人が入れる状態にするために、まずは除菌作業を行います。

ちなみに外からはわかりにくいのですが、孤独死や自殺が起こった物件の室内は“ゴミ屋敷”と言えるくらい、散乱・錯乱した状態であることがあります。心が折れてしまったのだろうなというのが、ひしひしと伝わってきます。御札が貼ってあったり、壁に読めない文字が書かれていたりすることもあります。自殺物件の場合、室内を綺麗に整理してから亡くなられる方もいらっしゃるので、一概には言えませんが……。

──特殊清掃の他に、事故物件に対して行うことはありますか?

弊社では、清掃後に「お祓い」や「ご供養」も行います。よく事故物件には「心理的瑕疵」があると言いますが、心理的瑕疵を分解すると物理的な汚れと、霊的な怖さの2つに分けられます。だからこそ特殊清掃で物理面をフォローしつつ、お祓いとご供養で心理面もフォローするわけです。その両方をクリアした物件には「成仏認定書」を発行しています。

弊社ではこうした取り組みにより、あらゆる事故物件が再生することを目指しています。実は成仏不動産という名前も、事故物件が不動産として「成仏」し、新たな価値を見出し再生してもらいたいという思いからきているのです。

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不動産投資家が物件事故にどう備えればいいか、また万が一事故が起こってしまったらどう対処すればいいかについては、成仏不動産インタビュー②の中で説明しています。

このさき「事故物件投資」がブームに?その驚きの収益性 /成仏不動産インタビュー②