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「ワンルーム規制」がもたらすワンルーム投資への3つの影響

作成者: NAVIVA運営部|2021年5月09日

2000年代後半に規制強化。年々厳しくなっている

これからワンルームマンション投資を始める方(あるいは検討している方)であれば、ぜひ知っておきたい条例が1つあります。それが「ワンルームマンション規制条例」です。不動産投資に関わらない方には馴染みがないと思いますが、実はこれがワンルームマンション投資の動向を左右する、大きな一要因となっています。ざっくりとでいいので、ぜひ頭に入れておきましょう。

ここでいうワンルームマンション規制条例とは、不動産開発業者がワンルームマンションを建てる際に一定の条件を守るよう、東京都の各区が定めた条例のことを指します。大まかにいってしまえば、「ワンルームマンションの建築を抑制する規制」です。内容は各区により若干違っており、条例の名称も異なります。したがってワンルームマンション規制条例とは、便宜上の総称になります。

ワンルームマンションに対する規制は1980年代からありましたが、2000年代後半に規制が強化され、その内容は年々厳しくなる傾向にあります。具体的にどんな規制かというと、一部例外もありますがほとんどの区が、一定以上の大きさのマンションを新築する際、一戸あたりの面積を「25㎡以上」にするよう求めています。あわせて多くの区が、マンション内にファミリータイプの広い住戸を一定以上設けることも定めています。

行政区 最低面積 対象 ファミリータイプ住宅の設置条件
千代田区 25㎡

階数4以上
専用面積30㎡以下の住戸が10以上

総戸数が20戸以上の場合は、
40㎡以上の住戸面積の合計が全住戸の1/3以上
墨田区 25㎡

住戸数15以上
または階数3以上で住戸数10以上

住戸数25戸~99戸の場合40㎡以上の住戸が住戸数の30%以上
足立区 25㎡ 階数3以上で住戸数15以上 40㎡未満の住戸が30戸以上の場合(40㎡未満の住戸-29)以上の住戸数を75㎡以上にする
江戸川区 30㎡ 階数3以上で住戸数10以上
渋谷区 28㎡ 階数3以上で33㎡未満の住戸が
15以上かつ総戸数の1/3以上

商業地域は、(総戸数-15)×1/3以上を50㎡以上の住戸にする

その他の地域は、(総戸数-15)×1/2以上を50㎡以上の住戸にする

 

自治体にとって単身者が増えるのは望ましくない

こうした規制により現在、都内で25㎡未満のワンルームマンションを作ることが、事実上できなくなっています。また規制を満たすには一定以上の広い土地が必要となるため、ワンルームマンションを建てること自体が、以前より難しくなっています。

では、東京都の各区はなぜ、こうしたワンルームマンションの建設を抑える規制を設けているのでしょう? 以下に、主な理由を3つ挙げます。

*近隣住民とのトラブル防止
全ての単身者がそうではありませんが、単身者は地域やマンションのルールを守らず、近隣住民とトラブルを起こすケースが、非単身者より多く見られます。

*地域活動の不活性化の防止
単身者の中でも大きなウェイトを占める若年層は、地域活動や行事に参加しない人が多い傾向にあります。

*区の税収を減らさないため
「税収」の問題も、区にとっては大きな理由でしょう。収入の少ない学生や若い社会人の割合が大きくなると、区の税収は低下します。また単身者の中には、住民票をその区に移さないまま生活する人もいます。

以上のような理由から、各区は単身者が多くなりすぎないよう、規制をかけているわけです。

都内で物件を買える投資家には追い風となる

ではいよいよ、こうしたワンルーム規制がワンルームマンション投資にどう影響するか、大局的な目線で述べていきます。

▼影響1_都内で物件を持てる投資家に追い風が吹く

ワンルーム規制により、1Kも含めた都内の新築ワンルームの㎡数は、実質25㎡以上となっています。加えて規制により、新築ワンルーム自体の供給が、以前よりだいぶ少なくなっています。それらが相まって都内のワンルームの物件単価は、ここ10年ほどでかなり上がりました。それにより、都内の一般的なロケーションで3000万円未満の物件は、少なくなっています。今やワンルームや1Kで4000万円以上するものも珍しくありません。

実際のところ25㎡というのは、1Rにしてはけっこう広いなと感じる大きさです。したがって、一般的な大学生や若い新社会人が住む物件よりは、少しリッチなイメージです。それでも都心ではそうした広めのワンルームの賃貸ニーズも高く、実際に売り出されるやあっという間に完売することが少なくありません。また入居率も、90%台後半の高い水準であることが多いのです。

さらには東京都の単身者は今なお増えていて、今後も増え続けると考えられます。したがって、この先もワンルーム規制が続けば、都内のワンルームマンションは供給不足になるでしょう。供給不足になれば、空室リスクや家賃の低下リスクは抑えられ、売却時の物件価格も高くなります。つまりこのまま規制が続けば、既に物件を持っている人やこれから物件を取得できる人にとっては、大きな追い風が吹くことになるのです。

▼影響2_郊外でのワンルーム利用がさかんになる

とはいえ、都内の高単価の物件を買える与信枠を持つ人は、それなりに限られます。また現在の規制が続くと、㎡数が小さくて家賃の安い物件に住みたいという入居者のニーズを、すくいきれなくなる可能性があります。

そこで容易に考えられるのが、たとえば都心から遠くない立川や柏といった郊外でのワンルーム利用がさかんになることです。郊外には基本的に東京23区のようなワンルーム規制はなく、土地もまだ残っているため、1戸の㎡数が小さいワンルームマンションを新たに建てられます。そして、郊外のそうしたワンルームマンションは、投資家にも入居者にもメリットをもたらします。

投資家にとっては、2000万円前後の手頃な投資額でワンルームマンション投資を始められる。入居者としても、郊外の狭い物件ということで割安の家に住める。既にワンルームマンションの“郊外化”は一部で始まっていますが、今後その流れは一層進むはずです。

▼影響3_“ユニットバス”が時代遅れになる

上記2つとだいぶ毛色の違う話になりますが、ワンルーム規制は、間取りに対する価値観にも影響を与えています。

ワンルームといえば、以前であればトイレ・風呂・洗面台が1つの空間にある3点ユニットや、トイレは別だけど風呂と洗面台がセットになった2点ユニットがよく見られました。ところがワンルーム規制の影響もあり、今では3点ユニットや2点ユニットの新築物件がほとんど見られなくなっています。なぜなら、部屋の面積が25㎡以上あると、3点ユニットも2点ユニットも、バランスが悪いからです。

したがってワンルーム規制が強化されて以降のワンルームは、トイレ・風呂・洗面台が全て独立し、かつ脱衣場もきちんとある間取りが、標準となりつつあります。結果的に3点ユニットや2点ユニットは、“時代遅れ”の感が強くなっています。今後、中古物件を検討する際は、その点も考慮に入れたいところです。

以上、今回はワンルーム規制とは何かと、それがワンルームマンション投資に与える影響を紹介しました。物件や投資プランを検討する際の、参考にしていただければ幸いです。