不動産投資用マンションに、自分や家族が住んでもいいの!?

投資物件を居住用にするオーナーはほぼ皆無

今回のテーマはズバリ、「不動産投資用の物件に、オーナー自身や家族が居住できるかどうか」です。

想定されるケースをいくつか挙げてみましょう。たとえばオーナーの息子が大学に入学することになり、大学に通う4年間だけ息子に住まわせる。あるいは甥っ子が就職

して上京するので、しばらくは安く貸してあげる。または生活環境が変わったので、オーナー自身が物件に住む。

賃貸経営用の物件とはいえ普通に考えれば、オーナーが所有するものなので、人に貸そうが、自分や家族・親類が住もうが自由です。だから結論としては、「居住用にするのは可能」となります。ただし、そこにはさまざまな問題やデメリットがあります。そのため、実際に投資用物件を居住用にするオーナーは、皆無に近いです。果たしてどんな問題やデメリットがあるのか、以下で見ていきましょう。

 

入居者に退去してもらうのはかなり難しい

まず何より問題となるのは、物件に入居者がいる場合、退去してもらわなくてはならないことです。たまたまオーナーの希望時期と入居者の退去時期が重なればいいですが、そうなることは稀でしょう。だから多くの場合、入居者に事前に伝えて退去してもらう必要があります。でも伝えたところで、すんなり退去してもらえるとは限りません。

なぜかというと借地借家法により、借り主は貸し主より強い立場にあるからです。そもそも住居というものは、人が生活する上で最低限必要なもの。だからそれが侵されてしまわないよう、借り主は法律で守られているんです。具体的には、借し主は正当事由がない限り貸り主を退去させられないと定められています。

正当事由の解釈に関しては、両者の状況によりケースバイケースなので一概には言えませんが、ざっくりいえばそれなりにきちんとした理由がない限り、入居者を退去させられないということです。

もし正当事由があって退去を願い出る場合は、半年以上前に告知することが契約で定められているのが一般的です。ただし半年前に告知したとしても、もめるケースも少なくないでしょう。たとえば入居者が大学4年生になった時に半年後の退去を告知されたとしたら、卒業の半年前に数十万円の引っ越し費用を投じて半年だけ住む家に越すことになる。入居者の立場からすれば、「ありえない!」となりますよね。

そういった際には協議が必要となり、場合によっては退去してもらうにあたり、数十万円の退去費用をオーナーが負担する必要も出てきます。

そもそも物件の管理を賃貸管理会社に任せている場合、管理会社は賃貸契約期間の途中で入居者を退去させることをとても嫌がります。なぜなら、なんとか退去してもらえたとしても、今の時代「管理会社からこんな理不尽な扱いを受けた」などとSNSに書き込まれたりされかねないからです。もしそうなれば、他の部屋の運営に大きな悪影響を及ぼしかねません。

だからオーナーが入居者の退去を希望しても、実際は管理会社が「そうしたことはクレームに繋がりかねないので、よほどのことがない限りやらないようにしているんです」と、首を縦に振らないことがほとんどではないでしょうか。

賃貸経営の再開時に、家賃収入が大きく下がる

また賃貸経営をサブリース契約を結んで行うオーナーの場合、物件をいったん居住用に変更することでオーナー自身に大きなデメリットが生じます。たとえば、築15年で一括借上額が9万円の物件を、息子に住まわせるためにいったんサブリース契約を解除するとします。そして5年後、息子が住む必要がなくなったため、再びサブリース契約を結ぶ。そうなると一括借上額は以前より数千円、下手すると1万円近くも安く設定されるかもしれません。

なぜかというと、賃料は年々下がっていくのが普通だからです。新築当初は賃料を10万円取れたとしても、20年経てば9万円台とか8万円台まで下がってもおかしくはないでしょう。となれば賃貸管理会社は当然、再契約を機に一括借上額を現状の賃料に見合ったものにしようと考えるわけです。

もちろん賃貸経営を再開するにあたり、サブリース契約にはせず、以降は物件を自分で管理するという選択肢もあります。ただし賃貸経営のノウハウがそれなりにないと、客付けや物件管理を行うのはなかなか難しいでしょう。

また入居者がいようといまいと、サブリース契約であろうとなかろうと、投資用物件を居住用に変更することはローン契約面で問題が生じます。

どういうことかというと、事業用ローン(不動産投資ローン・アパートローン)で物件を買った場合、金融機関には「物件を人に貸してその家賃収入をローンに充てます」という約束でお金を借りているわけです。でも家族に住まわせたり自分で住むとなれば、その約束を反故にすることになる。金融機関からすれば、「話が違う」「それでローンの支払いは本当に大丈夫なんですか?」ということになります。

まあ実際は居住用にしたところで、金融機関から問合せがくることはそう多くはないでしょうが、そうした事例が重なると金融機関と提携する不動産会社の信用性が落ちます。だから不動産投資会社としても、極力そうしたことは避けたいので、止めに入るのが普通でしょう。もちろんローン契約に関しては、支払いが完済していれば問題にはなりません。

サブリース契約を維持したまま居住するのは?

では、サブリース契約を継続したまま、入居者として家族・親戚が住むのはどうでしょうか? 当然ながらこれも、まずはもともといた入居者の退去の問題が生じます。

そして何より大きいのは、「そもそもやるメリットがあるのか」という問題です。家族や親戚が住むとしても、サブリース契約を続けるのであれば、敷金・礼金や規定の家賃は通常通り支払う必要があります。それならわざわざ投資機会をつぶすより、他で普通に賃貸物件を借りて住んでもらうのがいいのではないでしょうか。もちろん、投資物件にどうしても入居者がつかず困っているという場合であれば、それも一つの選択しかもしれませんが。

というわけで、投資用マンションにオーナー自身や家族などが住むことは可能ですが、メリットよりもデメリットや問題点の方がかなり大きいというのが実情です。なのでこれから事業用ローンを組んで不動産投資をしようという人は、その選択肢は最初から消してしまっていいのではないでしょうか。投資用マンションは、投資に徹するのがベター。投資効率を維持するためにも、それを念頭に置いておいていただければと思います。

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