ワンルームマンション投資は「一括借上契約」より「集金代行」の方がお得って本当!?

空室が出なければ集金代行の方がお得?

ワンルームマンション投資で賃貸管理を業者に任せる場合、「一括借上契約」と「集金代行」というスタイルのどちらかになるのが一般的です。実は一部界隈では、集金代行の方がオーナーの手元に残るお金が多いので“オーナー想い”であり、対して一括借上契約は業者が取る管理手数料が高くて信用できないという声もあります。はたして真偽はどうなのでしょう?

そもそも、両者は何が違うのか。大まかにいえば、契約期間中「毎月の家賃収入を保証するか否か」の違いになります。

どちらも入居者付けや、入居者からの問合せ対応、物件管理、リフォーム手配といった賃貸管理業務をオーナーの代わりに行うのは共通します。そのうえで、空室になった際の家賃収入をオーナーに保証しないかわりに、毎月の管理手数料を低めに設定しているのが集金代行です。手数料は賃料の3~5%くらいが一般的でしょう。最近では管理手数料が毎月1000円というところもあります。

対して一括借上契約の場合は、空室になってもオーナーには入居時と変わらない賃料が支払われます。契約期間中は空室時も家賃を保証します。そのかわり毎月の管理手数料は、集金代行よりも高い10%前後であることが一般的。

たとえば賃料が10万円の物件で、集金代行の管理手数料が3%であれば、オーナーが毎月受け取る家賃収入は9万7千円になります。対して同じ物件で一括借上の管理手数料が10%であれば、オーナーが毎月受け取るのは9万円です。そう考えるとたしかに、空室の出にくい物件であれば、集金代行の方がオーナーには断然お得のように見えます。でも、それを正しく判断するには、両者の仕組みをもう一歩“解像度”を上げて見る必要があるのです。

実は集金代行も業者側はかなり儲かっている

たしかに集金代行の業者は一見、3%ほどの取り分(手数料)で賃貸管理をしてくれるなんて、なかなか良心的に感じます。でも実際のところ業者としては、もしすべての賃貸管理業務を請け負いながら取り分が3%程度の管理手数料だけだったら、とても割りが合わなくてやってられないでしょう。

にもかかわらずなぜやっているかというと、当然それ以外にも収益源があるからです。その最たるが、入居者付けをした際に得られる仲介手数料になります。これをしっかり受け取っているのです。さらには入居時の礼金や、契約更新時の更新料を受け取る業者も少なくありません。

そして集金代行が一括借上と大きく違うのが、業者側に損益が発生する可能性がないことです。たとえ空室となっても、その間はオーナーに家賃収入が入らないだけで、業者側に痛みは生じません。だから中には、入居付けや賃貸管理、賃料の値付けなどをあまり親身になって行わない業者もいるようです。

対して一括借上契約も、基本的には仲介手数料や礼金、更新料は業者側が受け取ります。ただし大きく違うのは、空室のリスクを業者側が全面的に負うところです。だからもし空室となっても、その間オーナーは家賃収入を受け取り続けられます。

また新築から年数が経ち、入居付けのために賃料を下げざるを得なくなった場合、設定賃料が一括借上額を下回る「逆ザヤ」という現象も発生し得ます。たとえば、オーナーへの一括借上額が9万円なのに、業者は実際には入居者から8万7千円の賃料しかもらっていない、といった状態です。そうなると業者は空室になっていないにもかかわらず、毎月損失を被ることになります。

だから一括借上をする業者はそうならないように、高い入居率を保てるエリアや建物規格を選んだり、空室が出ないよう賃料設定を吟味したりと、よりシビアに運営する傾向にあります。

それと入居者が退去した際、たとえば冷蔵庫のあった付近が経年変色してしまったというような「入居者側の過失ではないダメージ」の改修は、預かった敷金からではなくオーナー側が負担する必要があります。その部分に関しても、一括借上契約であればカバーされている(業者側が負担する契約になっている)ことが一般的です。

対して集金代行の方はそこがカバーされていないことが多く、5年おきくらいに数万円の費用負担がオーナー側に発生したりします。その点も、一括借上が優位な点といえるでしょう。

ただし一括借上契約の場合、途中で一括借上額が下がったり、一括借上契約自体が打ち切りになるリスクがあるといわれます。実際のところ、そうしたことを行う業者もいないわけではありません。とはいえ、きちんと同じ額で一括借上を続ける業者の方が数は断然多いでしょう。

そうした一括借上の減額や打ち切りのリスクは、物件を買う際の想定賃料が相場に見合っているかどうか(=業者が物件を買わせるために、相場より高く設定していないか)や、一括借上契約に関する契約内容をきちんとチェックすることで、避けることができます。

集金代行はある意味ハイリスク・ハイリターン

以上のように集金代行と一括借上は、どちらもオーナーに代わって賃貸管理業務を代行するという点では共通します。ただその中で比べると、集金代行はよりハイリスク・ハイリターンであり、一括借上契約はより堅実・コツコツ型といえます。どちらが“お得”とか“正解”というより、自分のスタイルに合った方を選ぶべきでしょう。

多少の空室リスクを覚悟できるのであれば、キャッシュフローの良い集金代行を選べばいいし、多少キャッシュフローが下がっても安心・堅実にやりたいというのであれば、一括借上契約を選ぶ。

いずれにせよもし集金代行でやるのであれば、空室の出にくい好立地の物件を選ぶことや、万が一空室が出てもローンを数ヶ月は支払えることが必要となるでしょう。一方でワンルームマンション投資に限っていえば、ワンルームマンション投資自体がそもそも長期的にコツコツ堅実に運用するビジネスモデルなだけに、その特性を突き詰めるのであれば一括借上契約の方がよりフィットしているともいえます。

いずれにしても、「一括借上契約より、集金代行の方が断然お得ですよ」というセールストークを全面的に信じて投資をはじめるのは、空室リスクを考えるとリスキーです。両方のメリット・デメリットを客観的に押さえたうえで、判断するようにしましょう。

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現役サラリーマンオーナー・中林準

Jun Corporation代表 中林準。 立教大学卒業。 大学3年次、イギリスへ1年間交換留学後、日商簿記1級、米国公認会計士資格合格。 大学卒業後は、商社の経理部で主に海外事務所・現地法人の管理に携わる。 その傍ら、社会人2年目(2011年)の時に、区分マンション購入から、不動産投資を始め、2018年に1棟マンションを購入する。現在は都内に4区分マンション、1棟マンションを所有している。1年間グロス家賃収入は2000万円。過去に中国駐在経験もあり。CFP、1級ファイナンシャルプラン技能士、宅地建物取引士、管理業務主任者(資格合格)。 2013年9月Jun Corporation設立。若手のサラリーマン・OLを中心にした不動産コンサルティング業務を行っている。