ワンルームマンション価格の「これまで」と、コロナ&五輪を経ての「これから」

「物件の価格」は、ワンルームマンション投資の収支を大きく左右します。だからこそ、価格が今どのような流れのなかにあり、今後どう推移していきそうかを、大まかに把握しておきたいところです。そこで当記事では、2000年以降の物件価格の大まかな流れと、after東京オリンピック・afterコロナでそれがどうなりそうかを、ダイジェストで紹介します。

ワンルーム投資をできるのはごく一部の人だった

2001年から2020年までの20年間で見てみると、マンションの平均価格は実に全国で1.4倍、東京23区に関しては1.63倍にも上がっています。そのはじまりとなったのが、2000年代に起こったファンドバブルでした。

2000年代の初め頃から、外国投資機関の投資マネーを目当てに不動産開発がさかんに行われ、あわせてREITなどを通じて不動産投資市場にお金を投じる人も増えました。投資目的に不動産を買う人も増え、不動産価格は「ミニバブル」といえるレベルで高騰していきました。

ところが2008年に起こったリーマンショックにより、ファンドバブルは終わりをむかえます。それを境に不動産価格は急落し、開発した不動産を担保にして新たに不動産を開発するというスキームをエスカレートさせていた多くの不動産会社が、破綻に追い込まれました。

ちなみに2000年代のワンルームマンション投資の状況はというと、今より金利が数倍高く、金融機関のローン与信枠も今に比べるとかなり狭かったため、ワンルームマンション投資は医者やパイロットなど「一部のステータスが高い人が行える投資法」といった存在でした。年収の基準も高く設定されていて、今のように「年収400~500万円から始められる」という身近な投資法ではまったくなかったのです。

約10年間で住宅金利が1.5~2.0ポイント低下

リーマンショック後にマンション市場はいったん回復の兆しを見せましたが、2011年の東日本大震災後に、家を買うことに対する心理的な抵抗感も作用してか、不動産取引は鈍化します。

ところが2013年に2020年東京五輪の開催が決定してからは、首都圏のマンション価格は再び上昇基調に入ります。とりわけ湾岸エリアでは再開発がさかんに行われ、マンション価格が高騰していきました。

こうしたマンション価格の高騰は、政府の金融緩和策も大きく後押ししています。政策の方針で金利が低く抑えられたことで、多くの貸付けを行わなければいけなくなった金融機関は、与信枠を緩めていきました。これによりローンを組んで家を買う人の間口が広がり、マンション需要が増えたことで、価格は上がっていきました。

また大幅な金融緩和により円安が進み、中国や台湾を中心とした海外投資家が都内のマンションをさかんに買い付けたことも、マンション価格の高騰の要因となりました。

実際この間に、金利と物件価格はどれくらい変化したのでしょう。筆者がワンルームマンション投資の業界に入ったのは2008年ですが、当時の不動産投資ローンの金利は3%ほどでした。そこから金利はどんどん下がっていき、今では安いものだと1%台前半からローンを組めます。ざっと1.5~2.0ポイントも金利が低くなったわけです。

対してマンション価格の方はどうでしょうか。東京オリンピックの開催が決定する前の2012年と2020年を比べると、首都圏のマンションは平均価格が4578万円から6083万円に、東京23区に限って見れば、なんと5339万円から7712万円にまで高騰しています。

コロナ禍により、与信枠が狭くなりつつある

その後、2020年より新型コロナウィルスが流行し、2021年には東京オリンピックが予定の1年後に行われました。果たしてafter東京五輪・afterコロナのワンルームマンション価格は、どうなるのでしょう?

まずコロナ禍による影響として現場ですでに起こっているのが、金融機関の与信枠が狭くなりつつあることです。今までは問題なく不動産投資ローンを組めた属性の方であっても、業種や職種によってはローンを組みにくくなっています。たとえば旅行業界、航空業界、鉄道業界の方などです。

そもそも数年前に金融機関の一部で、多くの人に融資すべく融資申請書類の改ざんなどが行われていたことが発覚し、近年は与信枠が厳しくなる流れにありました。

とはいえ与信枠が狭くなりつつあることで、ワンルームマンション投資市場の動きが鈍化する動きは、今のところ見られません。

一方、今後の不動産価格をうらなううえで1つの大きな指標となるのが、やはり金利の動向です。住宅ローン金利と不動産価格は、基本的には“相関”の関係にあります。例外的な時期もありますが(まさにここ15年ほどがそうです)、基本的には金利が上がるのは好景気の状態なので、会社員の給料や不動産価格も上がっていきます。反対に金利が下がるのは景気が悪い状態なので、給料や不動産価格も下がるのが普通です。

そして日本は今のところ、金利が大きく上がる気配はありません。アメリカなどは景気回復にともない金融緩和を縮小する議論がすでに出ていますが、日本ではそうした議論は本格化していません。背景には、景気が上がってきていないことがあるのではないでしょうか。実際に会社員の給料も全体で見れば上がっておらず、今もし金利が大幅に上がったら、住宅ローンを支払えなくなる人がたくさん出てしまいます。

金利も不動産価格も劇的に変わる兆しはない

さて、不動産価格を予測するうえでもう一つ参考になるのが、日経平均株価です。株価も基本的には不動産価格と相関関係にあると考えられ、株価の動きから少し遅れて不動産価格も連動して動くといわれます。2021年6月の日経平均株価は、2020年6月より30%ほど上昇しています。それをふまえると、不動産価格もそれに追随して上がっていく可能性があります。

実際に不動産価格に関しては、2021年はコロナ禍の影響で上昇幅の鈍化が見られたものの、「上げ基調」であること自体は変わっていません。またオリンピック前には、オリンピック後の不動産価格の急落もささやかれましたが、今のところその動きも見られません。

世界中の人たちに甚大な影響を与えたコロナ禍ではありますが、一方でリーマンショックのような金融危機にはつながりませんでした。そしてワクチン接種や治療薬の市販などが進むことで、今後コロナ禍は落ち着いていき、経済がコロナ禍の前の状態に戻る可能性が高いと考えられています。

以上をふまえると、ワンルームマンション価格を含めた不動産価格は現状の水準を維持するか、金利とあわせて不動産価格も少しずつ高くなっていくのではと考えられます。ただ、前述のように政府は金利を大きくは上げられないでしょうから、金利・不動産価格ともに上がるとしても“徐々に”が前提となりそうです。

ワンルームマンション投資をはじめとする不動産投資に関わる際には、ぜひこうした大きな流れを大まかに頭に入れたうえで、重要な意思決定を下していただければと思います。

※ワンルームマンション市場の動向は、政府の“建替え促進策”にも少なからぬ影響を受けそうです。こちらの記事もあわせてどうぞ。
ワンルームマンション投資家に吉報!?政府の“建替え促進策”でより健全な市場へ

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